タロット「正義」は本物の人間を描いては居ない。

正義前述の「運命の輪」以降の大アルカナには人間は登場しません。
「正義」は「裁判の女神」ですし、「吊された男」はイエス・キリストです。
「星」も希望の擬人化、「太陽」の赤子も純粋無垢の擬人化です。

「隠者」以降は「精神・魂の旅」です。
精神世界に実存する人間が登場しないのは、至極当然でしょう。

「正義」は「裁判の女神」と述べました。
事実、裁判所には「天秤」「裁判の女神」のオブジェが必ずあります。
日本でもそうです。

また「正義」はマルセイユ版では「力＝剛毅」と逆になっています。
ただ絵柄のメッセージは変わり有りません。

■正義の教え■
１．決断には○か×、善か悪、有罪か無罪しかあり得ない

「正義」はプラトン著『国家』に書かれている四大徳の一つです。
「正義」のカードは非常に厳しいカードです。
天秤は公平さ。真っ直ぐに突き立てた剣は妥協を許しません。

人間は時には重大な決断をしなければなりません。
大学入試？就職？転職？独立？結婚？離婚？
様々な決断が待っています。
しかし、人間という動物は本能を露わにしません。人間以外の動物は、本能で行動します。人間は社会的な生き物なので、本能を押さえ込みます。

本当は本能のままに決断することがベストなのですが、多くの要素があるために重大な決断を後回しにする傾向があります。

決断は重要ですが、一つだけ条件があります。
自分が納得することです。
後悔しないこととも言えます。
ではその前に何が必用か？
判断です。

判断と決断は違います。
判断はできるだけ情報を違う角度で集め、メリット・デメリットを客観的に見極めることです。

ここで言う「情報」とは、あくまでも事実です。憶測や思い込みは一切捨てなければいけません。事実とは疑う余地の無い出来事・状況です。「・・・と思う」「・・・と感じる」というニュアンスはありません。
事実で確実なものは、「耳」よりも「目」でしょう。
伝言ゲームはご存知でしょう。
最初の一人目から最後の十人目では、まったく違う内容になってしまいます。
これはいたって、自然です。
なぜなら、伝聞には必ず憶測・推測が入り込むからです。

事実は「写真」「ビデオ」「文章」です。
例えば、「汚い部屋」というのは主観的です。どこがどのように汚いのか、何と比較して汚いのかわかりません。
しかし「写真撮影」「ビデオ撮影」すれば、一目瞭然です。
ただ「文章」はリスクがあります。
哲学的な文章でなければ意味はありません。哲学的文章というのは、言葉を常に定義している文章です。
哲学書は難解ですよね。
それは、定義が多いからです。
小説とは違います。そこには感情が入る余地はありません。
論理的です。
注意すべきは、「写真」「ビデオ」も一面からしか撮影しないのは事実とは言えません。
できるだけ主観を無くすには、帰納法的な思考が必要になります。

先ほどの「汚い部屋」を例にすれば、
Ａさんの部屋は・・・だ。Ｂさんの部屋は・・・だ。Ｃさんの部屋は・・・だ。
と多くの事例を記録します。
ＡさんもＢさんも、Ｃさんも社会的な成人だ。
ならば真っ当な成人の部屋は・・・だ。となるでしょう。
それに比較して、「汚い」か「綺麗か」を判断するのが帰納法です。

ただ「正義」は「法」を基準にします。
「法」は帰納的なものではなく、演繹的・絶対的です。
「赤信号を横断すれば有罪」とい明確です。

法律以外の状況・状態に対して、
ここで言いたいのは、判断するためには事実が大事。
その事実は帰納法的な事実。
ということです。

２．正義を貫くことは、他者から観れば人間味が薄いと思われる

「正義」はお堅いです。
それは極端だからですね。○か×しかありません。△は無いのです。
だから人間味に欠けると思われがちです。

「法」は絶対的なものです。
法律を破れば有罪。法律を遵守しているなら無罪です。
中間は存在しません。

中国三国志の諸葛孔明の逸話で、
「泣いて馬謖を斬る」という言葉があります。
孔明は非常に優しく、人間味溢れた人です。
しかも馬謖は、孔明が自分の後継者にすべきと、可愛がっていました。
でも馬謖は、ある闘いで「するな！」と言われたことをしてしまいます。
「軍規」は絶対です。
当時は「軍規」を破ると処刑です。
孔明は軍規違反した馬謖を泣いて、斬首しました。

仮に孔明という人物を全く知らなければ、
「諸葛孔明とはなんと冷酷な男だろう」と思うはずです。

現在の日本は不景気です。
よって経営者は、一番の固定費である人権費を削減しようとリストラをします。
首切りですね。
リストラは「なんて冷たい」のだろうと思うはずです。
それは確固たる根拠が無いからです。
本当にリストラをするならば、個人の能力・スキル・貢献度・モチベーション・成長予測を数値化して、
年齢や在職期間を考慮せずに行うのが筋です。
単に年齢が高い＝人権費が高い、だからリストラではたまったものでは無いでしょう。

決断は確固たる根拠があり、それを元にして行わなければなりません。
しかし、どんなに根拠があっても、「冷酷」「無慈悲」「人間味が無い」と思われます。
それを覚悟して決断しなければならないのです。
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