タロットは古代の秘密教義をあたかも一冊の書籍のように記した絵を描いたカードです。
タロットに興味を抱く方も、この絵柄の神秘に魅了されたのも多いのではないでしょうか。
私こと「小町」も、最初の動機は「絵」のミステリアスな雰囲気でした。仏教(密教)には「曼荼羅」という絵がありますが、その神秘的な雰囲気にも似ています。何かを我々の教えてくれるかのような、その絵の隠されたメッセージに惹かれるのでしょう。
「愚者」は大アルカナの中では「0」番が振られ、最初のカードであるのが一般的です。
※一部のデッキでは、「22」番が振られています。
この「愚者」は、個人的には好きなカードなのですが、この絵柄の図像について検証してみましょう。
「ウェイト・スミス」版の「愚者」では、主人公である「愚者」は両性具有のように思えます。男でもあり、女でもあるような、まだ性が確立されていない、まさに卵の状態なのかもしれません。
一見、断崖絶壁に立ち、まさに歩まんとする愚者は、非常に危険な絵柄なのですが、その顔は天を見上げて晴れやかです。カード全体のイメージが、明るいのでなんとなく陽性なイメージがあります。
アーサー・E・ウエィトは、「経験や体験を探究する魂」という表現をしていますが、どこにでもいけるが、どこに向かうのでもない、大変に自由なカードと言えるでしょう。ユングが述べている「永遠の少年」のような雰囲気が漂います。
「愚者」のカードは、中世の悪徳の一つである「愚行」を示すようです。
キリスト教世界では、「賢明」「貞節」を重んじ、「愚かな行為」は悪魔の所業でした。ただ、「愚者」のカードは、悪徳にだけ焦点を当てているようには見えません。その「賢明さ」と「愚行」の中間に位置するような、自由度が感じられます。カード自体の、構図はあきらかに「日常を逸脱」している感じです。なぜ、愚者が崖の上にいるのか?・・崖の上からスタートするのは不自然です。普通は、我が家や村落・町から旅立つのが一般的でしょう。
その意味でも、日常からかけ離れたシチュエーションを暗示させます。なんとなく道化師のような感じもあるのは、サーカスのピエロが日常からの逸脱の恰好な例からも想像できます。「若者」「愚かな人」「狂人」「道化師」・・愚者の象徴する主人公は、これらの性格を混ぜ合わせたようなものかもしれません。
「愚者」のカードは、実際の占いでは、扱いが難しい部類に入るかも知れません。
それは、厳密さが無いからでしょう。「正義」のように、白黒がはっきりともしていませんし、「死神」のような「死」や「停止」を暗示しているわけでもありません。とても掴みどころのないカードと言えます。「希望」があるとも言えますし、「無知」「無謀」とも解釈できます。
私は「愚者」を好意的に解釈することが多いようですが、周囲に隣接するカード群の雰囲気によって解釈を変えることが望ましいでしょう。
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