「恋人」のカードは、1人の若い男性が、2人の女性に囲まれている絵柄です。その男性は、どちらかを選ぼうとしています。その意味では「恋人」のカードは「選択」を暗示しています。
「5」の法王では自分自身が神の如き権力があるのですから、信者に一方的に意思を伝えるだけで構いません。迷いや選択の必要がないわけです。しかし「6」の「恋人」になると、二者択一という選択のプロセスが登場してきます。
「6」は自己の創造性を意味する三角と、外からの反応を示す逆三角の組み合わせです。そのため、自分の単独での意思では行動ができなく、相手の反応に振り回されたり、相手の要求に合わせて自分の姿勢を変えるという相対性が強く出てくることになります。いわゆる、自己以外の他者を意識せざるを得ないわけです。
また、「5」の法王では2人の信者は同一として描かれ、そこに個性の違いは感じられません。しかし「6」の恋人になると、あきらかに2人の女性が違ったパーソナリティーを持っているように描かれます。
イスラエル・ディガルディーの論では、この2人の女性は「イブ」と「リリス」と述べています。
「リリス」は堕天使・・悪魔・・とされています。最初のアダムの妻であり、外面は美しいのですが、男性を誘惑するような悪魔という見解をキリスト教はしています。
「イブ」はご存じでしょうが、リリスが空気中に逃避した後の女性です。サタンの誘惑により知恵の木の実を食べてしまい、それをアダムにも与えることから、エデンの園を追放されてしまいます。やがてイブは、アダムとの子でありアベルとカインを産むことになります。
また見方によれば、この「イブ」と「リリス」は、「女帝」と「女教皇」にも対応している感じです。
リリスは空気中・・心理の中に逃げ込み、妊娠もしません。でもイブは現実の世界に生き、子供も設けています。
そのように見ると、「恋人」のカードは、中央の男性が「リリス」を選べば現実の生活面での発展性は失うが、精神的には豊かになる。また「イブ」を選べば、精神の向上は望めないが、実生活の発展と充実はあるが、やがて老化と死がやってくる、という意味合いになります。
「6」の数字は偶数ですから、相対的で、外から見る自分と、自分の主観的な視野の間を揺れ動き、バランスが失った場合には大事に至る暗示があります。
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